【ヌエノデフラグ】

 頼政きつと見上げたれば、雲の中に怪しき、物の姿あり。射損ずる程ならば、世にあるべしとも覚えず。さりながら、矢取って番ひ、南無八幡大菩薩と、心の中に祈念して、よつ引いて、ひやうと放つ。手答して、はたと中る。

「得たりやおう」

 と矢叫をこそしてんげれ。

 猪早太つと寄り、落つる処を取って押へ、

「柄も拳も透れ透れ」

 と、続け様に九刀ぞ刺いたりける。

 其の時上下手々に火を燃して、これを御覧じ見給ふに、頭は猿、躯は狸、尾は蛇、手足は虎の如くにて、鳴く声鵺<ヌエ>にぞ似たりける。怖しなども疎なり。――『平家物語巻第四「鵺」/著者不明』

「何読んでんの、藤枝<フジエダ>」

 高垣<タカガキ>が投げ掛ける声を受けて、私は文庫を閉じた。それで表題の朱文字が消えるでもなく、隣に腰を下ろした高垣は、首を傾けて音読する。ヘイケモノガタリ。意味も抑揚も排除された読み方をしたあと、はあ、と呆けた声を上げた。

「なん、古文の課題かなんか? 手伝おうか」

「いいえ、特には。久しぶりに読みたくなっただけ」

「そか。俺一生読まなそうだから、代わりに読んどいてよ。大体、古文とか漢文て今後の使いどころさっぱり分かんなくない? だから勉強する気起きねえし、原文読む気もさらさらねえよ」

「確かにね」

 私の同意に、彼は満足げな笑みを見せる。私も笑った。私たちの笑いには幾らかの共犯者性、即ち、モティヴがなくとも勉学に勤しまねばならない身分への憂いが含まれている。そしてそれに順応を惜しまない程度に私たちは狡猾だった。高垣も私も、古典の成績はさほど悪くない。むしろ良い。だが、そこに価値を見出すような愚かさの持ち合わせはない。何故ならそれらペーパテストの設問は『解かれることを欲している』からだ。事前に学んだ解答への筋道、記入されるべき一意解、予定調和の赤丸。あたかも幼少期の飯事<ママゴト>めいた稚拙なごっこ遊びを、しかし私たちは黙々と繰り返す。私たちの価値を数字に変換して採点する誰かのために。いつかは数字で勝負しなければならない未来のために。高校二年生という曖昧な季節の陰には、紙とペンが見え隠れしている。来年の私たちは否が応にもそれを取るだろう。

 もっとも、私は学ぶことについて肯定的だ。謎を解く術は在れば在り過ぎるだけいい。正体を見極められなければ――そこにヌエが生じる。源頼政が切り刻んだモノは果たしてヌエだったか。私は違うと思う。「ヌエは、分からないからヌエなんですよ」。私の人生に現れた最初のヌエが、そう告げたのだから。

「ああ、週末に映画行かね? このご時勢にC級呼ばわりされてる酷いのやってるらしんだけど、ネット見ても罵倒の嵐なのがいっそ面白え大惨事でさー」

 一生読まない、等と吹聴したくせ、高垣は岩波文庫のページを捲りながら言う。多分に暇つぶしだった。彼の人となりは結構な確度で理解しており、そもそもが、放課後の図書館で平家物語を読んでいる元彼女に絡むぐらいは暇人だ。高垣の横にはいつも違う女がいて、偶々私が二ヶ月の間そこにいたに過ぎない。彼の長い長い、長過ぎて持て余された暇を消費するための偶像<アイドル>。

「昔みたいに」

 過去を踏まえて私が問うと、高垣は悪びれずに返した。

「そ、昔みたいに」

「弐飛<ニトビ>さんは誘ったの。また廊下で滑稽な見世物をしないように注意しなきゃ。見ていて可愛そうだったよ」

「俺が?」

「彼女が」

「だよねー」

 朗らかに苦笑した高垣は、本を私の手元へと寄越す。彼の、全体何人目かさえ定かではない今の女である弐飛は、つい先日にたくさんの観客の前で高垣へと食って掛かっていた。どうにも彼が他の女と二人きりで遊びに行ったのが気に入らなかったらしい。彼女が高垣を殴ったシーンが特に野次馬をヒートアップさせたものの、高垣は恒例の人当たりの良い笑顔と口当たりの良い台詞で彼女を収めたのだった。怒鳴っている人間は往々にして余裕がない。そして高垣は決して声を荒げない。この男は揺るがない斜塔で、柔和な悪人で、偽善を厭わない奉仕者で、私の友人である。

「そんなことばかりしているから刺されるんだ」

「『刺される方はけだし悪人か』。難しいこと言うなー藤枝。あと辛辣だな。そういうとこ好きだよ」

 高垣の掌が私の頭に乗る。私はそこに傷痕があることを知っている。指を整列させたなら横一文字に繋がる、親指以外に引かれた切り傷は、腹部の刺し傷とセットで曰く付きのエピソードに結ばれる。確かに、刺さった包丁の刃を直に握り締めたなら、出来る刃傷としては妥当だ。一見して優男な彼のそんな手で静かに撫ぜられると、参ってしまう女も少なくはないそうである。私以外の数人も、きっとその傷を舐めただろう。様々な舌が、慈しみや憐憫や、愛しみや献身や、或いは性交の一としてその上を這ったのは想像に難くない。 私は、実験だった。舌すらも試行する粘膜だった。高垣もそれを見越していたから、私の切り出した別れは――例え彼の思惑が達していなかったとしても同様に――彼を困惑させることはなかった。「そ。藤枝らしいや」。恋人としての最後の最後で、彼はヌエではなくなった。彼はただ、退屈に倦んでいる孤独の具現だ。

「俺とやり直す気は……ないよなぁ。そんな眼すんなって。佳人に睨まれるなんざぞっとしねえぜ、全く」

 顰めた私の視界の中、高垣は手を引いた。相も変わらずの、悪意が薄い表情のままでだ。

「苦労するね、弐飛さん」

「お前は苦労しなかった。そこが俺には面白かった」

「私も、それなりに楽しかったと思う」

「……考えといてよ週末。弐飛は適当に誤魔化しとっからさ」

 掌を自分の後頭部へやり、彼は席を立った。空いた手が鞄を拾い上げる。今更読書に興ずる気も失せた私は、連れ立って帰ろうかと考え、途端弐飛の甲高い声を想像し、飽くまで本の虫を装った。女の嫉妬は見苦しい。男の嫉妬は惨めな匂いがする。畢竟、嫉妬という奴が性別を問わず鬱陶しい。

「おー、荒白さん今日も走ってら。いいねー青春だねー」

 目が泳いだ。高垣を経由して窓を透過して、けれど座った状態では座高の低さも相俟り、彼女の姿を見ることは適わなかった。

「藤枝はどれやるんだっけ、競技」

 高垣は私を見ていない。それが一層極まり悪くて、視線を手の内の文庫へ戻した。

「障害物競争」

「ハードル潜ったりしないよにな。……悪かったよ。明日の朝起きたら芋虫になるから怒るなよ。そんじゃ」

 その芋虫は部屋から出られなくなるぐらい大きいでしょ、と指摘を入れられる前に彼は退散した。立ち代りで私は窓辺に寄る。見知った彼女が青いジャージ姿で駆けているのが見えた。あしろさんだ。彼女を認めて、私は少し、困った。

 小中高と、どの時期でもクラスに一人はいた『頼られ役』が2-Aの場合あしろさんだった。取り立てて目立つ背の高さに比べ、特別得意なこともない変わりに、苦手なこともない。『卒なく何でもこなすオールラウンダー』とは誰かの言だが、彼女にはそれが良く似合う。彼女は、全てを丸く収めるひと<オールラウンダー>だ。面倒ごとを押し付けられるでもなく率先して引き受ける、英語教師の横暴に抗議する、クラスの女子が付き纏われていたストーカーを退治する、エトセトラ、高垣がのらりくらりと万事を消化する男なら、あしろさんは正面から立ち向かって先に進む女だった。かと言って出過ぎることもなく、人望に厚い。たらい回しにされていたクラス委員長の肩書きもいつの間にかしっくりと馴染んでいる。

 あしろさんは誰も困らせない、困ったひとを助けてくれる子のはずなのに、私は少し、困っている。

 『刺される方はけだし悪人か』。高垣が先刻返した言葉は、なるほど難解な問題だ。人を刺したり刺されたりすることが現代日本のムーブメントであるらしいが、建前上は、刺した側に非があることになっている。そして、ここに情状酌量を混ぜるとたちどころにやっかいさが増す。つまり『刺された方はけだし善人か』だ。専門家でさえ困難を伴うこの判断を素人含みでやらせるのも、現代日本のムーブメントなのだから堪らない。もっとも、裁判員に選ばれるには、私はまだ子供だ。しかし紙の上の問題だけを解いていれば済むほど幼くもない。直面した不定は、ヌエは、解かないと駄目だ。

 最初に刺したのはどちらだったか。高垣と付き合っていることを明かした私か、さもなくば「羨ましいなあ、『高垣君』」と漏らした貴女か。貴女が慌てて口を塞がなかったら、私もそれを聞き間違いとして上手に処理出来たと思う。「どういう」意味かと問い損ねたのは、闖入した高垣のせいにしてしまえばいい。違う、あの場で訊きそびれたから、はっきりした着地を求めなかったから、私は貴女を不可思議の生き物に変えてしまった。

「あしろさんに解決してもらおうっていうのは、ずるい話」

 窓を掻いて、届くはずもない質問を詠んだ。彼女がこちらを見遣ったのは直後だった。嬉しそうに手を振る、まるで垢抜けない。私も同じ所作を返すのに居心地の悪さが消えないのは何故だろう。私のこの指が、貴女のお姉さんを抱いたと言ったら、刺す言刃<コトバ>としては充分でしょうか。

 「代わりにはならなかったみたいだね、女子高生。悲しいことにあたしもだ! でもちょびっとドキドキしたから頑張ったで賞を進呈」。あしろさんが言った通り、彼女のお姉さんは緩くていい加減なひとだった。電車を乗り過ごさず、頬に口付けを残して去る強かなひとだった。伊波姉さんの――恋人だった。私は、だから、怖くなった。私が伊波姉さんとしていたようなことを、あの遊びを、あしろさんもしていたんじゃないかと勘繰っていたのが、半ば確信に変わって、震えた。「晶、おいで」って。伊波姉さんが呼ぶ。私を夥しい黒雲で包んだ最初のヌエが、まだ私の中に棲んでいる。

「最後に全部嘘に変わったら、辛いよ、あしろさん」

 私は貴女を嫌う決意を固める。

 ■ ■ ■

 そして幾度目かの失敗をした。

「図書館にいるのが見えたから、急いで来ちゃった」

 屈託なさそうにあしろさんは笑う。制服の襟が片方跳ねているのが、急いだ様子を分かりやすく示している。私が彼女の袖を引くと、耳打ちされると思ったのか、軽く前屈みになる。私は近くなった襟をエリマキトカゲのそれからヒトの装飾へ直す。ふと香った汗、ありがとうと囁いた唇。

「良かったら一緒に帰ろ?」

「うん」

 ふたつ返事で答える私の口は、随分杜撰な仕組みをしているのに、貴女が顔を綻ばせるので、少し困った。

「やった。最近居残りしてばっかりだったから、久しぶりに晶と帰りたかったんだ」

 私はどう告げるべきか考えた。貴女が連日テニスコートかグラウンドの上で忙しくしていたのは本当で、私が碁石を摘んでいたのは嘘だった。元々熱心に活動している部でもなし、用事を用事と言伝するひとも稀な有様で、それに託けて私は休んでいた。帰宅時間が鉢合わせにならないように、意図して避けたのだと、あしろさんに懺悔しかけて、結局また頷くだけだった。今日は、少し、間違えたみたい。

 きっと大丈夫だ。貴女はあれから何も変わらず、私だって教室では普通の友人を演じていたと思う。貴女が横にいると元気が出るのは本当で、だけど、私が思考に蓋を出来なかったのも本当だった。あしろさんが私のことをどう想っているのか、折に触れては意識した。推測した、何もわからず。私は、多分、何ひとつ理解していない。

「セブンイレブン寄っていいかな? もちきんちゃくが、たーべたーいよーう」

 図書館を出ると、彼女は意味もなくリズミカルに言った。時期尚早のおでんもおかしければ、変なメロディで願望を歌うあしろさんもおかしくて、私は僅かに吹き出した。おーいしーいよーう? 後ろ手に鞄を持って、彼女が私の顔を覗く。私はあしろさんが体を傾けてくれると、少し嬉しい。自分の小ささが彼女にとって特別な気がして嬉しい。同時に、少し悲しい。ちぐはぐさが悲しい。私が背の高い男だったら、高垣みたいなフットワークの軽い男だったら、たくさんの事柄に決着がついていた。伊波姉さんも、ストーカーも、あしろさんも、私が男だったら、好意を寄せはしなかった、なんて、くだらない思考実験をする。

「……夕飯前におでんはアウト?」

「そうじゃない」

 立ち止まった私へ怪訝そうに訊ねる彼女へ訴えたかった。そうじゃないよね、あしろさん。もっと、ちゃんと、はっきりさせたいことがあるでしょ。一切を言えずに私は押し黙った。だったら取り繕え。彼女を乱すな。私は困っていないのだと、貴女とはずっと仲の良い友達でいたいのだと、好きなおでんダネの話でもなんでも、誤魔化せるだけ誤魔化して――曖昧に優しいN<シゼンスウ>であればいい。

「もしかしてお手洗い……でもないか」

 乗るよ、相談。高垣君のこと? うん。私の声帯は都合良く鳴った。ううん、が暈けた形だった。階段を降りて左、突き当たりに茶道部と共用の和室があって、私は南京錠のダイアルと今日の部室が無人なのを知っている。でもあしろさんの袖を引いて行く自分が、彼女に何を相談するつもりなのかを知らない。

「時々思うんだけど、こっちはダメ?」

 あしろさんの掌が私の手の甲に触れる。振りほどいたら、泣くのは私の方だろう。繋ぎたがっているのも私の方だとしたら、貴女は喜んでくれるかな。伊波姉さんは喜んでくれていたろうか。あの手は二度と帰って来ることなく、私の届かないどこかで、貴女に似た綺麗なひとと親密に結びついている。

「あしろさんが1500メートルに出るのは、誰も選ばなかったからなの」

 私は重なった彼女の手を取らず、袖を掴んだまま問うた。蔑ろになった掌が、僅かにさ迷って、私の肌を離れていく。適切な距離を維持することは大切だ。算段を誤った時の浅ましさと恐怖を、私は十二分に承知している。

「うーん……黙々と長距離走るのって、ストイックで良さそうな感じがしない? それにほら、わたしのコンパス長いから! 走る時はすごく便利!」

 足を持ち上げてトの字になる彼女の、その二画目は、ハイソックスに隠れていても湛えた躍動が零れ落ちそうだった。あの足がYを模す高さまで上がった時のことを覚えている。崩れ落ちた女の向こう側に、足刀<ソクトウ>を納める貴女がいて、名前を強く呼んでくれたから、私は震える体を動かすことが出来た。私を助けてくれたのは、貴女だった。だから私は、少し、私をあげてもいいと思う。あしろさんにならあげていい気がする。

「それは本音」

「もちろん」

 間髪入れずに答える貴女が、いつも本心で語っているとすれば、現実はとても美しいことになる。そんな訳はないのだ。時々は、我慢しているに違いない。嘘で丸め込んだのも一度や二度ではないはずだ。四方八方に張られた彼女の優しい網が、綻びることもあるのではないか。私は実験をしなくてもそう予測する。だって人間は、ずっとは他人を慮れない。ずっとは――愛してもらえないもの。

「晶は障害物だったよね。顔が真っ白の晶、楽しみだなぁ。けど、筏<イカダ>渡りの上でキミを見れないのが、すこーし残念かも」

「走るのは得意じゃないから。それに、背が低いっていう理由だけで出場競技を決められるのは、釈然としない」

「かわいいのに……かーわいーいよーう?」

 小さいものは可愛い、か。高垣もそんなことを何度か言った。私はその言葉が嫌いだけれど、あしろさんに言われるのは悪い気持ちがしない、なんて、言えない。丁度部室の前に着く。はぐらかして鍵を開けるには都合が良かった。私は彼女の袖を放す。

「わたしは障害物苦手だもんねー。ネットにはこんがらがるし、バットをおでこに当てて回ると逆走しちゃうし、顔真っ白は恥ずかしいし……あれが人気でほっとしたもん」

「不人気だったら、どうしたの」

「え?」

「ごめんなさい、何でもない」

 どうなるかぐらいは分かっていた。無駄な質問である。意味を取りかねたあしろさんは、ただ困った風に微笑むだけだった。錠が外れる。戸を開くとイグサの青い匂いが掠めた。

 下駄箱にふたり分の上履きを仕舞い、私たちは畳へ膝を付く。正座をしたのが私、横座りをしたのが貴女だった。

「楽な座り方で失礼させていただきます、てね。……話、出来るかな」

「うん」

 私はあしろさんの足を見つめて、気のない返事を与えた。ヌエの話をしたならば、この足は私の側を去って、二度と一緒にはいられないと思う。だったら高垣の話が無難か。そこから、少し、貴女へ潜り込むことにする。

「高垣が、私とまた付き合いたいって言うんだ」

「……あ、あんにゃろー……この前も弐飛さん泣かせたばっかじゃない! 晶だって見てたよね? キミがあんな風にされたら、わたし、絶対に高垣君をキックしちゃうよ」

 色めく彼女は、あからさまに反対のようである。当然私にも縒りを戻す気は皆無だけれど、貴女のリアクションを引き出すには、このやり方が早そうだ。だって、何だか落ち着かないみたい。

「ああ見えても、真<シン>にだって優しいところがあるよ」

「それは、あると、思うけど……だからって」

「真は、たくさん『愛してる』って言ってくれる。私のことを大切にしてくれる。それに、すごく上手なの」

 何が、とは言わなかった。大半が出鱈目<デタラメ>であるとも教えなかった。あしろさんは困惑している。泣きそうな目をしている。ねえ、どうして簡単に襤褸<ボロ>を出すの? 私、困る。

「なら、晶もオッケーする、のかな。もう! ノロケたいなら最初からそう言って欲しかったよ! おうえん、すーるよーう」

「真が私を愛していなくても。私が真を愛していなくても」

「……? 晶?」

「あしろさんが私のことを好きでも」

 私は彼女の瞳を覗き込んだ。こんなに驚いた眼をしている貴女は初めてだったから、私も少し、揺れた。

「私と付き合いたいのは、貴女」

「そんなこと――」

「ないんだ」

 彼女の袖を取った。良好な関係へ戻ることを求めているのに、私は一々彼女を撹乱している、矛盾。

「当たり前だよね。私は女で、あしろさんも女。恋愛なんて事象は生じない、そうでしょ。愛は定型です。血縁を持たない男女間で行われるものです。型を外せば幻想です。幻想は現実により淘汰されます。淘汰されれば消失です。消失は恐怖です。恐怖は、ヌエで、私は、私は」

 怖いのも、分からないのも、嫌なんです、あしろさん。もう傷つきたくないんです。本気で誰かを好きになったら、捨てられるのが怖くて、捨てられたら、駄目になるんです。だから、なるべく、恋愛は、普通にするのが一番いい。まともな、猿も狸も蛇も虎も出てこない、安全な形式が適切なんです。

 私は、貴女にとって何だったの、伊波姉さん。

「あきら」

 あしろさんが私を引っ張った。勢い、彼女の胸に収まる。嫌だ。私、おかしいんです、あしろさん。伊波姉さんは遊びだったはずなのに、私の心も体も、勘違いして、まだあのひとのものなんです。私はレズビアンじゃない。近親相姦者でもない。そんな風に括らないで。

 ちゃんとしますから、私を、おかしいって、言わないでください、お願いです。

「あーもー! 荒白歌折<アシロカオリ>の昔話シリーズ! 創世編!」

 突然の声に肩が竦む。いつの間にか私は、すっかりあしろさんにくるまれている。前に回された腕は、高垣より細いけれど、何故か頼もしく思えた。違う、そういうことを思ったら駄目だ。でも彼女は、私をしっかり包んで放さない。そのまま口上を捲くし立てる。

「わたしには、ヘタレで適当でなあなあでいい加減な、とても優しいお姉ちゃんがいましたが、なんと、お姉ちゃんもわたしも女の子が大好きなのでした! 終わり!」

「おわり」

 私は首を上へ向ける。あしろさんが真っ直ぐに見つめ返す。

「追記! キミのことを愛してる! 荒白歌折、いっつみー!」

「ゆ、ゆー」

 気圧されて言った私に、彼女は眩しい笑顔を見せた。少し誇らしげに、少し恥らって。

「という風に、キミと恋愛したい女がいるのを主張したくなったのは、キミに『愛は定型』って言われたのが悔しかったからね。女同士は上手くいかないなんて、誰か証明したの?」

「私は駄目だったもの」

「じゃあわたしでもう一回試そ」

「あしろさん、急に強気」

 指摘すると、彼女は赤らめた頬を軽く膨らませた。

「晶がつついたんでしょー? それに、いっつもいっつも袖掴まれてたら、この子もわたしのこと意識してるかもって、もうずーっとむらっむらしてたんだからね! こんなかわいい子をまた高垣に渡すとか無理。ほんと無理。わたしがもらう!」

 貴女が私を欲しがっている、その事実は私にとって、嬉しい。ぎゅってされるのが気持ちいい。でも、だから、友達のままでいた方が、失敗しないと思うの。友達は、もし駄目になっても、傷つかないから。伊波姉さんとも、普通の姉妹だったら、私はこんなに傷つかずに済んだ。

「あしろさんとは、友達でいたい」

「そしたら、晶がわたしの腕から逃げないのはどうして? 顔が赤いのはどうして。わたしを一言も否定しないのはどうして。いつも、助けてって言うみたいに――わたしの袖を引いていたのはどうして」

 あきら。あしろさんが私の顎を持ち上げる。私は反射的に目を閉じて、暖かい暗闇の中で気づいた。あしろさんを好きだったのは、私。傷つきたくなかったのも、見ない振りをしていたのも、本当はこうなることを期待していたのも、みんな私。あやふやなもの<ヌエ>は、私だった。

 瞼を下ろしたまま、私は彼女を待つ。だのに施しが捧げられることはない。心配になってあしろさんを見る。不似合いな、意地の悪い表情をしている。

「友達だったら、キスはしないよね。晶が友達がいいって言うなら、止めた方がいいのかな」

「ぁ」

 私はあしろさんの袖に指を伸ばす。来て欲しいと催促する。それでも知らん顔の貴女を求めるために、懸命に思考を働かす。シンプルな答えが黒い靄を抜けた。

「あしろさんが好きなの。好きだから、キスして欲しい」

 彼女は自分の口を押さえてそっぽを向く。私はやっぱり、彼女の袖を摘んで求愛する。あしろさんが掌の裏で小さく呟いている。「何このかわいい生物……鼻血出そう……理性も飛びそう……」。あしろさんが乗り気なことに、私は少し、安心した。早く手をどけてもらえるように、口を塞いでいる手の甲へ舌を伸ばす。指の背をひと舐めすれば、んっ、と控えめな声が聞こえた。

「あしろさん、好き。ふぁ」

 彼女の手が動くのと、私の体が引き寄せられるのはほとんど同時だった。唇に甘くて柔らかいものが触れる。あしろさんの唇。舌で撫でると確かに甘かった。私は彼女の腰を抱きしめて、その味を何度も楽しむ。止めるみたいにあしろさんの舌が出てくると、今度はそれに絡みつく。ざらついた表側に、滑らかな裏側。どちらも私の心まで甘くしていく。あしろさんは、おいしい。唇で舌を挟んで吸い上げると、彼女はしがみつくように私を抱いた。

「あ、の、されたい、じゃなくて、したいひと? 舌、動き、過ぎで」

 途絶え途絶えに彼女が尋ねる。私の口は、むしろ酷い饒舌さだった。

「口は上手って、伊波姉さんも褒めてくれたの」

「いなみ……え、晶の、お姉さん、え?」

 その意味するところを、あしろさんはどう思うだろうか。よせばいいのに私は追究してしまう。

「幻滅する。初恋も初体験も、実の姉が相手だって言ったら」

「わたしはお姉ちゃんと、そういう色っぽい話なかったから……びっくりした。でも、好きだったんでしょ?」

 私の首は、素直に縦へと振られた。あしろさんの方を忍び見る。貴女は微笑んで、なら、いいじゃないって簡潔にまとめた。たったそれだけの言葉が私をどんなに許したか、貴女に分かって貰いたかったから、その首筋へくちづけた。

「あきら、ストップ! それダメ! だ、めぇ……歯止め、利かなくなっちゃう……」

「だって、あしろさんにお礼したいもの。いっぱい、いっぱいお礼、したいから」

 私は、最後にこうなって欲しかった。なることを期待していた。ふたつの実験――高垣と付き合うことと、貴女と似たひとに体を重ねること――の結果は、結局貴女から逃げる言い訳にはならなかった。私が求めていたのは、それなりに格好いい男でも、貴女に似た女でもなくて、貴女だった。そうしたら、貴女に受け入れてもらえないと、私は行く先が消えてしまう。惨めな失敗で終わりたくはなかった。

 そんな拘泥よりも、もっと純粋に、ちゃんと、好きって言いたかったから、私は、嬉しかったんです、あしろさん。

 丁寧に首元を清めていく。タオルで拭き取ったみたいだけれど、彼女の肌は仄かに汗の味がする。舌先が、あしろさんの味で気持ち良くなる。

「少し、しょっぱいかも」

「あ、や、やだ」

 つい口を滑らせると、途端に彼女は私を押しのけた。でも、おいしいよ。小さく舌なめずりをして見せる私に対して、恥ずかしそうに唇を結ぶ彼女が、可愛らしかった。

「私の舌で、あしろさんの色んな場所、綺麗にしよ」

「は、鼻血出すよ!?」

 鼻を押さえて彼女は言った。畳が流血沙汰になるのを連想した私は、伸ばしかけた手を静止させる。

「それはちょっと困るかも」

「声もいっぱい出るよ!」

「私、タオル持ってる。これで両方大丈夫かな」

「なら安心……って違うでしょ!? こら、鞄探らないの! あーきらー」

 本当に鞄を探し始めた私に、あしろさんがじゃれつく。一方で、貴女が嫌がる冗談はこのぐらいにしておこうと思う私もいる。タオルを見せて、少し困らせたら、お礼はまた今度にしよう。水色の布を手にした私は、悪巧みと共にあしろさんを顧みて――押し倒された。

「ふーじえだちゃーん」

「私のスリーサイズは別に連番じゃないよ、あしろさん」

 そしてあしろさんは怪盗という柄でもない。私が一人で納得している間に、彼女は私の両手を括った。見慣れた水色が固結びの状態で持ち主を裏切っている。

「あしろさん、これ」

「晶は、声出ちゃうのかな?」

 私の前髪を弄び弄び、あしろさんが問い掛ける。形成が逆転したのだと理解するのに数秒を要した。私は素知らぬ顔で質問を流す。伊波姉さんよりは控えめだけど、決してだんまりではいられない。それぐらい教えても構わないのに、少し、気恥ずかしかった。

「あきら」

 あしろさんの掌が、そっと私の口を覆う。彼女が半身を乗せていて、腕も拘束されている手前、私は従順にマスクを掛けられる。股の間にあしろさんの足が割り入って、ゆっくり、ゆっくり押し当てられる。私のそこを圧迫する。あきら。あしろさんの声が耳にくすぐったいから、私は口元の掌へ吐息を零す。本当はそれだけじゃないことを、知らん顔しながら。

「教えてくれないと、わたし、直接確かめるよ?」

 貴女は、見上げる私の瞳が濡れているのを見抜いていて、だから止めないのだろうか。私がこういう遊びを好きなのは、伊波姉さんしか知らなかった秘密だ。姉さんがたくさんしたからか、私が元々素質があったのかは分からず仕舞いなものの、私は、虐められると自分がどうなるのか熟知している。

「晶に誘惑されたら、我慢出来ないし……『舌で色んな場所、綺麗にしよ?』だったっけ。ひとにそんなこと言うんだから、自分がされても文句言わないよね……?」

 ここ、綺麗にするね。返答を待たずにあしろさんが耳を咥えた。私はきっと、子犬みたいな悲鳴を上げた。耳の外郭を唇と舌が滑っていく。私の息が彼女の掌を湿らせていく。もしかして、こういうの、嫌いじゃない? あしろさんが優しく訊ねる。なのに、舌が乱暴な動きで音を聞く孔へ入って来る。私の腰が無意識に浮いて、彼女の足へ恥ずかしく求愛する。掻き回して欲しいって、お腹の奥から涙を流す。

「腰動いてるよ。かわいいんだ」

 たくさん舐め音を聞かせたあと、意地悪な言葉を注ぎ込む。口を塞いでいるのとは別の手が、もう片方の耳へ伸びて、指で入り口をくすぐった。次はこっちだと暗示した。心臓がずきずき痛む。あしろさんが私に覆い被さって、逆の耳を食べて、私は彼女に全部食べられている錯覚を起こす。食べて。はしたない台詞は掌が隠してくれた。でも、くねる腰が私の心情を明け透けにする。

「っ、はぁ」

「苦しかった?」

 ひとしきり両耳を吟味し終え、私の呼吸器を開放した彼女へ、乱れた呼気と潤んだ視線でしか応えられない。あしろさんの手が、必死で息継ぎする唇をなぞる。そのまま顎に降りて、喉を通り過ぎて、蛇行しながらスカートまで辿り着く。

「苦しそうだから、緩めてあげるね」

 あしろさんはもっともらしい理由を付けて、スカートのホックを外す。私は一向に楽にならない。彼女が私の腰を持ち上げてそれを脱がすと、視線から逃れようとしてきつく両足を揃えた。

「こっちは苦しくないの?」

 指が下から上着の中へ進入し、お腹に触れる。僅かに押し込んで、あしろさんがどの場所の話をしているのか体へ説明する。とくん、と切ない水の溢れる音が聞こえた気がした。

「ほら、ちょっと足を開くだけで楽にしてあげられるよ」

「ぁう」

 指は下に動き、私のショーツに形を浮かせる。チリ。飾り毛の感触を確認するに留まって、指は抜かれた。下着のライン伝いに腿へ進み、その場で淫らに五指を蠢かす。私は焦れ、言われるままに足を広げる。あしろさんの指は約束を違えて、私にもっと辛い仕打ちをした。下着を器用に脱がされ、片足ずつ抜かれてしまうと、私は横向きに丸まって、縮こまった。縛られた手で股を隠した。

「わあ……晶ってば、すごく濡らしてる……」

「か、かえして」

「だーめ」

 あしろさんは精一杯伸ばした私の手を取り、下着ではなくキスを与える。諦観と待望が私の自我を欠けさせていく。

「この分だと、晶の、畳に垂れちゃいそう。わたしから綺麗にしてもらうのと、畳にえっちな染みが出来るの、どっちがいい……?」

 彼女の言う通り、自分の蜜が流れ落ちつつあることを感じている。肌を舐める粘性の液体が、実際に染みになるかを私は知らない。試す勇気もなかった。

「あしろさん、お願い、お願い、します」

「うん。わたしもそんなもったいないことしたくないし」

「え、勿体無いって」

「……晶の恥ずかしいのは、わたしが舐めたいんだもん」

 ポーズがきつかったら言ってね。あしろさんは私を仰向けにさせてから、両膝を胸の方へ押し上げる。赤ん坊がおしめを換えられる格好だった。足の間には貴女の顔があって、その側に剥き出しの恥部があって、私はたちまち目を逸らす。

「内腿まできらきらしてる。頑張って綺麗にするね……」

「あっ、や、やぁっ」

 ちゅう。彼女が吸い付く音に合わせて、私の喜びの声がデュエットする。右の腿を啄ばむこと数度、花びらの一枚に蝶が止まった瞬間、私はひと際大きく歌う。こえ、おっきぃよ。あしろさんが、とても嬉しそうに注意したから、自分で、タオルで括られた手で口を塞いだ。晶はお利口さんだね。あしろさんの台詞とお腹をさする手が、私を子供扱いしている風で、少し、悔しい。そんな考えは雫共々、あしろさんに吸い取られていく。私の快楽の翼はすっかり広がっていて、その付け根では隠すべき真珠が露呈している。あしろさんの舌先がそれをくすぐった時、私に出来たのは足の指を丸めることと、口を押さえる力を強める程度だった。あしろさんがいっぱい、いっぱい吸うから、そこは痛いくらい張り詰めている。張り詰めて、私のお腹の奥に始終快感を伝え続けている。

 だから、彼女の唇が離れてしまうと、安堵と疼きが一緒くたになって訪れた。最後まで導いて欲しい。私は浮いた足を小さく悶えさせる。あしろさんはと言えば、別の場所に興味を示している。

「こっちも垂れてる」

 足に掛かる力が増して、私の一番恥ずかしい部分があしろさんの視界に入る。ふぅ、と息を吹き掛けられて、彼女の目論見を直接的に思い知る。

「うそ、だめ。きたないから、きたないよ、あしろさ」

 抗議の声は無視される。あしろさんの舌が後ろの穴をつつくと、私はまた自分の声を殺すことに躍起にならなければいけなかった。羞恥心交じりの背徳感が、背骨を這って、私の目を強く閉じさせる。溜まった涙がこめかみを流れ、髪に伝い落ちる。

「薄ピンクで、すごくかわいいのに」

 私が嫌がったと捉えたのか、あしろさんは足を下ろさせた。変わりに、脱力する私を後ろから抱き上げて、彼女の膝上に座らせる。私と彼女の混ざり物が一滴、スカートの裾に滲んだ。

「あ、スカート、汚しちゃう」

「汚したいの。ほら、初めての記念に?」

 そしたら晶、ずっとドキドキしてくれるかな。あしろさんの中指が私の入り口に当たって、慎重に進んで来る。私は大丈夫なのを教えたくて、自分から腰を迫り出した。お腹の中にあしろさんを迎え入れた私は、その形を覚えるみたいに、何回もナカを震えさせる。

「あしろさんも、ずっと、わたしにドキドキして欲しい。いっぱい愛して欲しいの」

「晶、かわいすぎ……」

 私にぴったりくっついて、肩を抱きしめて、あしろさんが手を動かす。出入りする指が私の大切な部分を優しく刺激して、掌が尖った蕾を甘く圧迫する。あしろさんに抱えられたまま、私は登りつめて、彼女のスカートに点々と幸せの跡を残した。  

 □ □ □

TO:伊波姉さん

Sub:お久しぶりです

 姉さんにこうしてメールを送るのは、随分久しぶりのように思います。元気にしていますか。私は、元気になりました。大切な女の子が出来て元気をもらいました。

 私は、(伊波姉さんは、もう忘れているかも知れないけれど)、貴女がまだ私を「愛している」と囁いてくれていた頃の想い出を、未練がましく引き摺り続けて、急に素っ気無くなった日のことは、今でも振り返れば胸が痛みます。どうしてああなったか、訊ねたら教えてくれましたか? 私はあの時以来、貴女が話していた『ヌエ』という存在を勝手に貴女へ当て嵌めて、試行錯誤しながら生きていました。そのうちに、どうにも、私自身があの得体の知れない生き物に変わっていたらしいのです。なんて、言われても困ってしまいますよね。

 伊波姉さんにどんな思惑があったのであれ、私は、私のこれからを見つめることにするつもりです。私の大切なひと(歌折さん、って言います)は女性で、でも、私はもう一度、難しい恋をしてみます。だって、例え同性であっても、例え姉妹であっても、私は自分の恋心に嘘が吐けないみたいです。姉さんがどう思っていたとしても、私が、ずっと、貴女のことを好きだったように。

 大事なのは自分の気持ちだという、ごく当たり前な結論でもって、私は私というヌエの始末<デフラグ>を終了します。

 ……あ、何言ってるんだこの子、って思ってますね。いいんです。こういうエゴイスティクな話題はこれぐらいにしますから、敬語でばばばばっと捲くし立てる、いつもの癖は許してください。(もう治りましたか?)

 本題です。実は、私は伊波姉さんがお付き合いしている女性のことを知っています。荒白千鶴さん、何だか憎めないひとですね。そして私の恋人のフルネームは、荒白歌折さん、です。今度(もし、もし姉さんが、千鶴さんもオーケイしてくれるなら)、ダブルデートしませんか? だって、2組の姉妹が2組のカップルになっているこの偶然が、私には、とても稀有に、とても素敵に映るんです。

 突然のメールでしたが、お返事を頂けると嬉しいです。では、失礼します。

 追伸:お父さんが、たまには娘の顔が見たいってぼやいています。こっちの方も、良かったら。

 ■補講■

・点1:荒白千鶴 23歳 OL フェムタチ
・点2:藤枝伊波 22歳 派遣社員 ネコ
・点3:藤枝晶 17歳 高校生 勉強中
・点4:荒白歌折 17歳 高校生 リバ

・辺1:点1と点2(双方向)
・辺2:点2と点3(双方向)
・辺3:点3と点4(双方向)

 今回、グラフでのエヌはこのような性質を元に作成されました。

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