【恋慕八月】

 自分がワガママなんはようわかっとる。自分のことばっかり必死になっとったから、心に傷が二個できた。体に傷が二個できた。どっちも深くて、なかなか忘れられんねけど、大事なことやしそれでええんかなって思う。ウチの姉ちゃんと妹と、ウチと、三人での楽しかった思い出やったり、しんどかった思い出やったり――殺されかかったこともあったわな。自分のしたこと覚えとるから怨みはせん。ふたりがまだウチのこと怨んどるならそれでもええ。お説教も、罰も、あの世でじっくり受けたるさかい……生きとる間はあんま引き摺られんようにするわ。忘れんが、痛み続けるのはやめとく。

 カレンダーは八月七日になっとる。今年の誕生日はワガママ言うのよしとこって思うて、お父ちゃんにもお母ちゃんにも誕生日会とかせんでええって告げた。プレゼントもいらんって言うた。お父ちゃんたちは目ぇ丸くしたけど、友達に祝ってもらうってウソついてその場は収めた。ホンマは予定もなーんもなくて、夏休みの宿題でもするつもりやったが、よう考えたらウソ丸出しでアカンなぁって、浴衣着てお祭り行くことに決めた。

 電車で揺られながら、暗い夜道の向こうに、一学期のできごとを見とった。みんな怖い思いして、傷ついて、命が危ないなるようなこともあって……実際ウチも死にそうになった。黄色い浴衣の胸辺りを撫でると、背中から静かな痛みが刺す。姉ちゃんの射た矢が貫いた部分。あのときウチは心のどっかで安心しとった。死人にクチなし言うても、伝えたいことのひとつやふたつあるやろ。せやから、姉ちゃんの怨み言葉と、ウチに突き刺さった矢が届いて、怖かった反面安堵した。姉ちゃんの悔しかった気持ちは、この傷痕の中にちゃんとある。ギゼンかも知れんけど、堪忍な、姉ちゃん。

 こういうこと考えとると、ウチは保崎さんを守るふりして自分から射線に入りたかったんやないかってツッコミたなる。分かりやすい痛みが欲しくてしゃーなかったんやない? ん、どうやろね。ないっちゅーたらウソになるなぁ。でも、ウチは保崎さんの代わりに撃たれるんならええかなぁって思うたよ。保崎さんはウチが怖かったとき、救けて欲しいときに来てくれたから、手ぇ差し伸べてくれたから、今度はウチが救けたるんやーってええカッコした。あと、ちょうど保崎さんの誕生日やったから、それもおっきかったわな。保崎さんはオトナやし、誕生日とかぜんぜん気にせーへん可能性はあるけど、やっぱりその日くらいは特別でええやん。あれからも色々あったせいでプレゼントあげ損ねたんが気に食わんが、来年はゼッタイ渡すで。もうお化けに邪魔される心配もないねん。ウチ自身の照れに邪魔されるっちゅー線は大有りやけど、そこは頑張ることにしとる。

「おわっ! ……つっ」

 電車がエラい揺れて、ウチは肩からドアにぶつかった。情けな。背ぇ足らんで吊り革はキツいし、座席は浴衣のお姉さんらで埋まっとる。柱に捕まっとったとは言うても、ちょうぼんやりし過ぎやったな。鈍く痺れる肩に手ぇ当てて、改めて車内を見回すと、誰かが、それぞれ誰かと喋って盛りあがっとった。

 ひとりなのなんてウチだけやった。情けな。混ざって雑<マ>ざって意味不明な会話は、ウチの惨めさに拍車をかける。「友達いないの? 寂しいね」。そんな台詞に聞こえる。うっさい、おるわ。ええ友達が七人もおるわ。好きなひとも……おるわ。こんまえのお祭りかて九人で行ったっちゅーねん。あ、牧瀬センパイを友達に勘定するんを忘れとった。ええひとやけど影薄いもんなぁ、センパイ。やば、点呼のときに晴ちゃんからスルーされとったの思い出した。アカン吹く。センパイ美味しすぎや。結局我慢できへんで、ウチは小さく笑い声をあげた。それで多少気ぃ楽になった。

 今日はひとりでええねん。みんなと遊ぶんは他の日で構へん。みんなの輪の中におるだけでいつだってウチは特別でいられる。誕生日しか特別な日がない、サミシイ女はもうおらんのや。姉ちゃんは強かったから、ひとりでも特別でいられたみたいやけど、ウチは無理やな。無理無理。友達がおらんとウチは特別になれん。でもウチはそれでウチや。かまへんもん。だから今日は……ひとりでええねん。少し、肩が痛くっても。

 停車のアナウンスといっしょに、あちこちでひとが立ちあがる。分かりやすうてええな。ドアが開いて目的地を目指す色とりどりのアリンコに交ざって、ウチも電車を降りた。サンダルの紐が指の股に食い込む。大人しくこんまえとおんなじのを履いてくればええのに、卸したてのヤツ履いてきてもうた。長く歩いてみて初めてわかるサンダルのズレみたいに、なんやウチも段々ズレとる。変な意味で特別な日の気がしてイヤな気持ちになった。

 なにをへこんどんねんウチは。みんなで回るお祭りも楽しいが、ひとりかて気楽なもんでしょ。お小遣いはしっかり持っとるし、前のお祭りのときなかったあんず飴の出店、あるかも知れんやん。あれ食べに来た言うても過言やないで。

 ウチは甘すぎるもんも辛すぎるもんもダメやけど、あんず飴はむっちゃ好き。透明な水飴にあんずがくるまっとる見た目がかわええし、薄い宝箱と宝石みたいやし、なにより、初めて行ったお祭りで初めて食べたもんやったせいで、ウチの中では特別になっとる。今年はワガママ言わん代わりに、それを一個だけの特別にするつもりでおる。じゃあ出店がなかったら? そんとき考えるわ。

 神社の場所は大体覚えとって、そんうえでいかにもお祭りに来ましたゆうひとだらけやから、迷うはずもあらへん。ついていってついてこられる、そないな電車ごっこをしばらく続けたあと、たくさんの橙色と屋台の色と、浴衣の色に迎えられて、ウチは僅かに目ぇ細めた。ひと多いなぁ。みんな楽しいこと探しとんのやろか。こんだけおったら……今日が誕生日のひとも、おんねやろか。誰かにお祝いしてもらっとんのやろか。ひとりでは、ないんやろうな。

 首ぶんぶん振って、まとわりついたモヤを追い払った。しっかりせえ茜! 折角お祭りに来とんねん、楽しまな損やろ! 意気を奮ってウチは踏み出す。明るさと騒音がおっきなって、ウチを中へ入れてくれた。別にはみだしとらん。ズレとらん。ひとりでもちゃんとお祭りには加われる。そーいうもんや。

 きゅるる。お腹の虫がなんか食わせー言うて鳴く。ウチは苦笑して、でも遊ぶには腹ごしらえからやなってことで、食べもんの出店をちょろちょろ冷やかす。イカ焼き、焼きそば、カキ氷――は別腹やな。あんず飴も。氷の器に並べられたあんず飴を見つけて、ウチはかなり気分ようなる。器の前に提示されとったサイコロの図は、ゲームありますって言うとんのとおんなじで、ますますノってきた。

 ひとまずたこ焼き屋に目ぇつけて、ぼろい商売しとんなぁって内心ツッコミながら、焼きたてがプラッチックの容器に移されるんを待った。たこ焼きっちゅーと凛ちゃんがおもろかったな。あきらのヤツが「ぷっ、リンリンってば八重歯に青ノリついてる! ちょーうける!」とかからかったもんやから、しばらく口開けへんかったところに、晴ちゃんが「見たい見たい!」って妙に興味津々や。凛ちゃん珍しく真っ赤やったな。最後はあきらの冗談って割れて、アイツは射的の的にされかかったけど。

 たこ焼きを受け取ったウチは、人ごみの中で食べるのもちょっと面倒そうやったんで、沿道を多少外した場所へ動いた。明かりが緩くなったそこには数組のカップルがたむろしとる。石段に腰かけてカキ氷の食べさせあいなんぞしとって、こないなトコでイチャつかんでもええのになぁ、ちうありきたりな感想を抱いた。

 ヒロと迫谷さんなんかはハタから見とってカップルっぽいクセに、ああいうの全然ダメやもんな。迫谷さんが自分のカキ氷食べさせようとしただけでヒロのヤツ動転しまくりやったもん。なにが「おおお俺、冷たいのパス! つーか今日涼しいだろ!」やねん。アンタのデコに浮いたのは水ですかっちゅーの。いや、冷や汗か? ヒロももっとガッといけばええのにな。あのヘタレ。……しっかしアクティブなヒロが想像できへんわ。そんなんなったら迫谷さんも困るやろ。やめやめ。ヒロはヘタレ担当でええわ。迫谷さんはヒロのそうゆうトコが好きなんやろうし。

 ……ウチは、女同士で好きやの嫌いやの、何言うとんねん。ハゲとるんか頭。アイツらフツーに友達やろ。恋愛はオトコとオンナでするもんや。単なる友情になに色づけしてんねん、下衆。キショいわ。せくように爪楊枝でたこ焼きを一個刺し、クチんなかに放った。せく? どこにせく必要があんねん。ウチは別に

「だぁあっつぅ!? 煮えとんのかこのタコ!」

 半ば吐き出すカタチで、タコ飛ばしながらウチは叫んだ。むしろウチがタコやった。カップル連中の目が点になったあと、失笑がそこかしこで踊る。とんだ道化やった。さっきまで鉄板のうえにおったんが熱うないわけもない。情けな。カップルに背ぇ向けて、爪楊枝でたこ焼きをふたつに割って、吹いて冷まして少しずつ食べた。舌が焼けたんか味がようわからんで台なしや。ズレとるなぁ。クズかご探してゴミ捨てる。いっぱいになっとるゴミが、なんやたまっとるウチのズレみたい。アホ! どんだけ悲しがりやねんウチは! しゃんとせえ! 誕生日やろが! ……誕生日、やったな。

 お父ちゃんたちには友達とおるって言うて、友達には家族とおるって言うて、ズレてズレて、こんなところでタコに悪態ついとるウチは、なんなんやろ。右肩が思い出した風に痛なる。左足の親指も変な痛みがある。お腹はたこ焼きで満足しとる感じやし、遊んでみよか。遊んだら気ぃ紛れるやろ。先にあんず飴食べるんもええな。せやせや、あんず飴買お。

 出店に戻ってみると、小学生くらいの子らが店先ではしゃいどった。歓声の中を風鈴に似た澄んだ音が抜ける。なんしとんって思うたら、ラーメンのどんぶりにサイコロを投げ入れよる音やった。「やった! 全部おなじ目が出たよ!」

 嬉しそうな男の子に対して、モナカに乗ったあんず飴がみっつ手渡される。そん子は両隣の子にひとつずつやって、ありがとうをもらっとった。次の組も複数狙いなんか知らんが、サイコロ振る子を相談で決めよる真っ最中。

 サイコロの数はみっつ。どんぶりにサイコロを投げて、出た目でもらえるあんず飴の数が決まるっちゅーことらしい。ウチは男の子たちの後ろに並んで、画用紙に描かれたルールをちらっと見る。ゾロ目が三個。連番が二個、ただし六から一へは続かへん。その他が一個。どんぶりからサイコロが零れても一個。あないおっきいどんぶりでサイコロ零れるとかないわ。ゲーム自体は完全に運やけど、悪ないな。ウチがルールを見とる間に、前の子らが何の数字出したか知らんが、店のおっちゃんがあんず飴をふたつ用意しとった。その子らの数は三人で、一個足らんっちゅう微妙な状況を嫌ったんか、サービスゆうてもう一個出した。商売になれへんでおっちゃん。でも、悪ない。

「はいよっ、次のお客さん」

 ごっつい掌からお代と交換のサイコロを渡される。カチカチ、カチ。ウチは手の中でみっつの四角を転がして、投げた。綺麗な、涼しい音が鳴る。鈴虫か松虫か、先の季節の音色がする。サイコロ同士がぶつかって離れてぶつかって、くるくる回って、次第に静かになる。どんぶりとサイコロでこないなことになるのが、なんや楽しかった。

 これで目が綺麗ならそれに越したんはないが、残念やけどゴアイキョウやった。六と六の隙間で三が申し訳なさそうにしとる。別にええのに。三個もらっても手ぇ二本しかないし、二個もらってもあげる友達はおらんねん。今日は負けてもええわ。

「あー、惜しかったねえ。気落ちしないで好きなの選びな!」

 ウチが一番手前のおっきなのを指さすと、おっちゃんのぶっとい指がそれをつまんで、モナカのうえに乗っけてくれた。お父ちゃんと見間違う、おっきくてやさしい手やった。

 急に、思うてしまった。今日ウチ誕生日なんですって言うたら、オマケしてくれへんやろか。おめでとうとかゆうてくれへんやろか。声はお父ちゃんと似てへんけど、お父ちゃんみたいにお祝いしてくれへんやろか。

「おっちゃん、おおきに」

 みっともないこと口走らんうちに、お礼言って歩き始めた。やっぱりウチ、ズレとる。調子狂っとる。恥ずかしい。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい! 落ち着こう思うのに早足になる。下向いてワケわからん歩き方する。石畳がゆらゆらする。一面、あんずを包んだ水飴みたいにゆらゆらしとる。滲んだ涙がうっとうしくてかなわん。どこのドアホやねんウチは。何が悲しいねん。こんなんあきらに笑われるで。保崎さんもからかうに決まっとる。

 ――保崎さんは、慰めてくれるんちゃうの?

 思わずウチは立ち止まった。保崎さんのこと考えたら、胸の奥の、傷と関係ない場所が痛んだ。

 そして足先に激痛が生まれた。

「痛っ! な、なん……?」

 バランス崩して屈み気味になる。いったん持ち直して、改めて屈むと、サンダルの鼻緒と擦れ続けた親指に豆ができて、そっから潰れたんを知った。これ帰るんしんどいなぁって、自分が笑っとるんか泣いとるんかようわからんで、ぐちゃぐちゃで、両手が両手ともなんも持っとらんのに気づいたら、ウチの傍であんず飴が傘被って落ちとった。モナカのしたで、多分、地面とくっついとった。

 うずくまった。今日、全然ダメやんなぁ。なあ姉ちゃん、やっぱりウチはひとりやと何も上手にやれんわ。帰ろっか。でも動かれへんよ。全部ウチがアホやったせいやから、文句とか言えへんけど、アカンみたい。好きな色の浴衣着て、新しいサンダル履いて、髪もアップにして、いつもと違わんでええとか思うとったのにいつもと違うことやっとるから、ズレたんかな。家で宿題しとったら、こんな誕生日にならんかったかな。今日ウチ、誕生日やったよな。別に特別な日やなくてよかったんや。ただ、ちょっとだけ……楽しいことして、おいしいもん食べたいって思うてん。ホンマはお祝いだってして欲しくって、やけどウチがワガママやったら誰かに迷惑かかるから、ガマンしようて決めたんや。決めたのになぁ。

 瞼んあたりが湿っぽくなる。悲しい気持ちがじわじわ押し寄せる。鼻がツンと痛んで、しんどい。泣くなって自分に言い聞かせても、冷たいんがひとつぶ頬を滑った。

 歯ぁ食いしばって堪えたのに、ふたつぶめが流れていく。でもこれはウチのせいやない。誰かがウチの頭に手ぇ当てて、ぽんぽん叩いたせいやった。優しい手が何回か触れる。自分がみっともない顔しとるのわかっとるけど、それが誰の手か気になって、ウチは顔あげた。

 狐がおった。ちゃう、お面や。夜色の浴衣に蝶を飛ばせとる子が、狐のお面を被っとった。狐の子はウチに向かって手ぇ差し出す。ウチはこの光景を知っとるから、自然に名前を呼んどった。

「ほさきさん……?」

 狐の子が小首を傾げる。零れた黒髪にはなんや違和感があった。保崎さんの髪やったらもっと長いはずや。切ったんやろか? いや、髪よりおかしいトコがある。耳にかかっとんのはお面の紐だけで、見慣れたメガネのフレームが見当たらん。保崎さんがコンタクト入れとんの見たことないし……着物かてこんまえとは違うんを着とる。保崎さんやないのんか?

 ウチが吟味しよるのを知っとんのか知らんのか、狐の子は黙って手を伸ばしとる。握るまで動かんよに思えて、そん子の白い指を軽く掴んだ。ホンマはウチが握りたいだけやったけど、握り返す手はウチの気持ちごと包んでくれた。ゆっくり立ちあがる。足の指はまだ痛いが、繋いだ手から薬でも入って来とるみたいやった。あんまり辛ない。

「お姉ちゃん誰やの? なんでお面しとんのですか」

 年上やって思うてちょっと敬語交じりに聞く。狐の子はまた頭を横に傾けた。少し困っとる風にも見える。クチ利かれへんのかな。わからんまま手を引かれて歩く。なるべく足の傷を擦らんようにすると、どうしても歩き方がおかしなる。そん子はすぐに気づいて、ウチの前に出た。両手を後ろへ回して屈む。おぶされっちゅーことみたいやった。

「ええって! もうそないな歳と違いますわ!」

 両手振りながら背中に告げる。やけどお姉ちゃんは相変わらず知らんぷりで通そうとする。どないせえっちゅーねん! 大体アンタ誰やねん! なんで……優しくするんや。

 結局ウチが折れた。折れて甘えた。狐の子はウチをしょって、お祭りの中を歩いてく。どこに連れてかれるんかは大して気にならんかった。どうせ行くトコもないし、そん子の背中は安心できた。今のウチにはそれで充分やった。目ぇ瞑ってお祭りの音を聞く。騒々しいはずやのに、やたら眠なった。お祭りが遠のいてく。静けさが割合を増してく。どんくらい背中で揺られとったんか知らんが、ふいにウチは降ろされた。お社<ヤシロ>の裏? ひと気がなくて薄暗い石段は、お祭りとの間にはっきりした境界を持っとる場所やった。ウチが思っとったほどお祭りの音は離れてへんけど、ひとが周りにおらんせいか、エラい静かに感じられた。

 狐の子が隣に座る。なんでこないな場所までウチを連れてきたかは、聞いても答えてくれんのやろか。返事がないなら、返事の要らんこと言えばええのかな。おめでとうって言うてくれんやろうけど……このひとには言うてもええのかな? ウチは小さく唇動かす。そん子を見んで言葉だけ伝えようとする。

「あんな、今日ウチ」

「誕生日だよね」

「っ!?」

 おめでとう、つっちゃん。狐のお面をあげて、保崎さんはそう言った。メガネしとらん目がまっすぐウチのこと見とる。口元はほほえみの形になっとる。ウチはアホな鯉みたいにクチぱくぱくしとる。保崎さんはそんなウチを黙って見とる。頭ん中が白黒白黒、早回しのオセロしとる気分。

「あは、つっちゃんの顔おもしろーい。びっくりした?」

「……『びっくりした?』やないわボケェッ! いつもんメガネはどないしたんや! アホッ! アホメガネッ! メガネナシメガネッ! いっぺん死にさらせぇ!」

 ウチが捲くし立てると、保崎さんはふざけて耳塞ぐ真似をした。ニコニコしてウチの非難を聞いとる。

「だって眼鏡をかけてたらお面が被りにくいでしょ? この前そう思ったから、コンタクト作ってみたの。似合う?」

「似合うも、なにも」

 保崎さんに見つめられて、ウチは言葉に詰まった。保崎さんのメガネ外しとるトコあんまり見ぃへんから、やっぱり違和感があるし、メガネの方が似合っとると思う。せやけどメガネしとらん保崎さんは――綺麗やった。アカン、アカンアカンアカン! このアホメガネは褒めたら図に乗るからアカンぞ!

 ウチが内部葛藤しとる間に、保崎さんがやたら近づく。ウチの後ろ頭へ手が伸びる。

「つっちゃんは似合ってるね、ポニーテール。普段のふたつ結びも好きだけど、よく似合ってる。かわいいよ」

「べ、べつに、かわいないわ。んっ! さわらんとけぇ……」

 髪を撫でとった指がうなじをなぞる。ソコを掠めらるたんび、ウチの力が抜けてく。背中がぞわぞわでいっぱいになる。

「大体、なんで、ぁっ、保崎さんがここ、おんねん」

「つっちゃんがいるかなーって思ったから。いけない?」

 悪いとか悪ないとか、そういう話とちゃう。なんでわかったんや。誕生日は家族と過ごすって言うたの、ウソやって気付いたんやろか。それともウチの家に電話かけたんやろか。お母ちゃん、茜は留守ですって喋ったんやろか。でもウチ、行き先は言うてへん。第一、場所がわかったとして、人ごみん中からウチ探すのがどんだけ手間なんかってことや。ウチの浴衣はこんまえとおんなじやけど、髪型が違うし……なんで。

 なんでいつも、そばにおってほしいときに、きてくれるんや。

「あたしがお祝いしたら迷惑かな」

 保崎さんが寂しそうな顔する。イタズラしとった指も止めて、ウチの目を覗き込む。心臓がぎゅうっと締め付けられる。

「迷惑とかは、全然ないで。けど、保崎さんの方が迷惑やったろうし、誕生日なんかで騒ぐん、恥ずかしいし」

「んー……あなたの誕生日で騒いでるあたしは、恥ずかしいって感じないよ。だって、あなたが生まれた大事な日だもの」

 おめでとう、つっちゃん。ウチを抱き締めて保崎さんが言う。憎まれ口叩くのもできへんで、ウチはちっちゃい声のありがとうを返した。ここでお礼言わんとかウソや。一番お祝いして欲しかったひとが、おめでとって言うてくれたんやもん。……嬉しいんやもん。保崎さんの腕の中、ウチは幸せな気分に浸る。柔らかい飴に包まれとる、あんずの気分。

「そう言えば、あんず飴食べ損ねたんやった」

「あんず飴? 確か出店があったよね。買ってこようか」

「え、そんなん保崎さんに悪い……ウチも行く……」

 立ちあがろうとしたウチを保崎さんが制する。絆創膏か、傷に巻けるものも探してくるから、ちょっと待っててね。言うが早いが行ってもうた。保崎さんはウチを甘やかしすぎや。正直困る。調子狂う。嫌いって言えんなったら、好きって言うしかないやん。保崎さんは、ずるい。

 胸の部分を抑えたカッコで、ウチは待った。こんなんおかしいやろ。ウチと保崎さんはただの喧嘩仲間やないか。好きとか嫌いとか、ちゃうやろ。あきらと海老塚さんやないんやで。あんなおんぶに抱っこみたいな関係とちゃうねん。

 おんぶ。途端にウチは思い出した。ココまでウチのことおぶってきたんは誰やった? 狐のフリしてウチを化かしよった、保崎さんやんか。ウチ、ずっと保崎さんに背負われとった――?

 顔から火ぃ出る音がした。なんで保崎一花におんぶされなならんねん! どこがお姉ちゃんやねん! 保崎さんの背中で安心しきっとった自分がアホの大安売りに思えて、ウチはむっちゃ赤面する。怒鳴り散らしたろかってヤケになりかけるが、それはそれでアホバーゲンやから止めといた。

 なんや熱い。変な汗出とるし、心臓の音がうるさい。でも辛いのとは少しちゃう。さんざ悪態ついた割に、自分の気持ちはわかっとった。ウチはやっぱり、保崎さんのこと、好きみたい。爪噛んで、火照った顔のまんま待つ。保崎さんが帰ってきてくれるんを待つ。お祭りの喧騒から外れとっても全然さみしない。保崎さんがおれば、さみしない。

 しんみり浸っとったら、首がむずむずし始めた。ウチの感情と関係ない痒みを指で掻く。その部分が硬く膨らんどるのは、蚊に食われたせいらしい。夏やししゃーないけど、こんな、ひとがおらんトコに座っとったらええ的や。なんで保崎さんはこないな場所で待たすねん。わざわざウチしょって来たからには理由のひとつもあるよに感じられて、首掻きながら考えた。静かでええっちゃええが、近くに誰もおらんし、変なおっさんが出よったらエラいことになるでホンマ。ウチはええオンナやから、下心あるおっさんのひとりやふたり、ふらふら寄ってきてもおかしないしなぁ。ま、妙なことされそうになったら蹴って逃げたるわ。

 もし、保崎さんに妙なことされたら? ウチの思考はそこで凍る。ガッコでされるイタズラより、もっとやらしいことされたら、どないする?

「お待たせー。……? あたしの顔に何か付いてる?」

 狐のお面を頭にかけた保崎さんが、不思議そうな顔しとる。手にはモナカの皿とあんず飴が乗っとった。少しずつ溶け始めとる水飴と反対に、ウチは体を硬くする。

「な、なんもないで」

「そう? はい、あんず飴。お店のひととじゃんけんしたけど負けちゃったから、一個だけだけどね」

「保崎さんは食べんの?」

 ぎこちなくモナカごと受け取って尋ねる。保崎さんはウチの横に座って、お面を取ったあと、あたしはいいんだ、ちゅーて笑った。つっちゃんが食べてるところを見ていたいしね。そんで視線送りよる。ホンマにええんかなぁ。お代払うべきやろか。そんなじっくり見らんとけ。ホンマはやらしいことする気なん? 色々考えてごちゃごちゃになっとる頭は、飴をクチに含んだら考えごとせんなった。水飴の地味で懐かしい甘さが広がる。普段食べん、お祭りの味がする。お父ちゃんとお母ちゃんと、姉ちゃんと葵と、ウチがおったあの頃の、幸せな味。あんずから染み出た甘酢が交ざって、ほのかに酸っぱい。それも、なんやあの頃みたいやった。舌のうえでゆっくり消えてく想い出。

「おいしい?」

「ん。保崎さん、ありがとな」

 保崎さんは頬杖ついてウチを見とる。物欲しそうな顔はまったくしとらんが、保崎さんにも食べさせたいなって思うた。でも間接キスになってまう。モナカに垂れとるのをあげるのも、カップの裏のアイスやないんやからってなる。そしたら結局方法がなくて、ウチは黙って飴舐めた。保崎さんの視線が熱い。保崎さんの方見たり、目ぇ逸らしたり、また保崎さん見たりするウチは、目が合うたんびに熱っぽくなってく。ニコニコせんとけ! なにがおもろいねん、このメガネナシメガネ! コンタクトしとるせいでいつもより距離が近い。隣に並んどるのはいつものことや。今日は、むっちゃ、近いけど。

 最後にあんずを食べるころには、暑うて仕方ないなっとった。割り箸をとりあえず石段に置いて、モナカをどうしようかなって思っとるウチの手首を、保崎さんが握る。丁度親指が脈のトコに乗って、ウチがドキドキしとるのバレへんか不安になった。

「ね、あたしも味見していいかな」

 モナカが保崎さんの手に移る。ウチは構わんが、そないな残り物舐めるくらいやったらもう一本買えばええのに。内心の言葉を言わんで、ウチは首をタテに振った。保崎さんのひとさし指が水飴を掬う。キラキラ光る指は、ウチの上唇にすっと線を引いた。は? なにしとんねん保崎さん。ウチが味見してどないすんのや。

「ほさ」

「喋っちゃダメ。舐めるのもダメだよ。だってつっちゃん、味見していいって言ったでしょ」

 今度は下唇に水飴が塗られる。ワケわからん。ウチに塗りたくっとるヒマがあったら、その指舐めぇ言うねん。ウチの唇舐めるんやないんやから――!?

「あんずはつっちゃんが食べちゃったし、あんず飴じゃなくなっちゃってるよね。折角だからあたしはつっちゃん飴を食べることにしようかなって」

 モナカを置いた保崎さんが、両手でウチをくるむ。どこまでアホなんやこのメガネ! あ、今はメガネしとらん!? ならハゲや! ハゲ! ハゲハゲ! クチを大にして言いたいねんけど、水飴がノリみたいになっとって唇は開こうともせん。保崎さんの顔が近なる。直視に耐えられんなって目ぇ瞑った。

 ちろ。保崎さんの舌が唇を滑った瞬間、ウチは肩をビクつかせた。間接キスのほうがまだマシやった。やって、こんなんキスといっしょや。ちろ。保崎さんがまた舐める。唇が動かんで息できへんウチは、鼻の辺りで変な声出してまう。つっちゃん、甘くておいしい。保崎さんがワザと耳元で言って、ウチのことからかう。甘いのはウチやないわボケェ! 飴の味に決まっとるやろ! ウチの味とか、あじ、とか。

「声だって、とっても甘いよ」

「や、やかまし……っあ! みみ、あかんてぇ」

 必死で反論しようとしたのに、やらしい声が続いて台無しや。ウチの耳の溝やら耳たぶやらが保崎さんに食べられる。頭ん中が真っ白になって、ただ震えるしかできんなる。なんか言い返さなアカン。でも保崎さんの舌が飴のついとる部分に戻る。唇舐められたら上手に話せん。こんなん困る。

「んん、ぅ、らめ、やって」

「舌はダメ? じゃあ、ちゃんとキスしよっか」

「ちゃうわ……んっ!」

 このハゲには日本語通じんのか!? 誰がキスされたいって言うたねん! 保崎さんなんかキライや! 大っキライや! 死ねばええ! ……って言うて、ウチは葵のこと、亡くしたんやった。ホンマは無くしたくなかったのに、いらん言葉で失ったんやった。なんでウチはこんななんやろ。キライやないくせに。保崎さんとキスしたいって、思っとったくせに。――好きなくせに。

 素直やないことばっかしとったら、保崎さんの手も失うんちゃうのか。そんなんイヤや。ウチは保崎さんにしがみついた。飴の味か保崎さんの味かわからん甘い唇に、自分から唇重ねた。保崎さんがちょい身じろぎする。こうゆうのは予測しとらんかったの?

「何だか、つっちゃん積極的だね」

「保崎さんが移ったんや。されっぱなしやと思うたら大間違いやぞ」

「わー、頼もしいな。けどあたしは、されっぱなしのつっちゃんだっていいんだよ?」

 保崎さんの手が首筋に沿う。そのまま下へ伝い降りて、胸のトコで止まった。指先が浴衣ごしにウチの先っぽを探す。そんなに薄手の生地でもないから、なかなか見つからへん。その分擦れて、心臓らへんが切ないなって、保崎さんにもたれかかってまう。俯き加減のウチは、がんばってクチ開いて本音聞かせた。

「ウチやって、してあげたいもん。……好きやから」

「え、なに?」

 アンタはどんだけイジワルやねん! そら、ちっちゃい声で言うたウチも悪いが、告白くらいちゃんと聞かんかい! ウチの胸まさぐっとる性悪メガネ、もとい性悪メガネナシメガネの顔を見上げる。目線しっかり合わせたら、今度こそ聞き逃さんよに言うたった。

「保崎さんのこと好きやから、ウチもしてあげたいって言うたんや! わかったか保崎一花ぁっ!」

 保崎さんは手ぇ止めて、きょとんとしとる。ウチの気のせいやなければちょっとずつ顔赤くなっとる。なんやそれ。隙だらけや。ウチは保崎さんの胸元に狙いを定めると、指を忍ばせた。保崎さんが邪魔するより先に膨らみを覆う。下着をつけてへんソコを優しく撫でたったら、すぐにてっぺんが硬なった。

「好き同士なら……あ、っ……さわりっこ、する? はんっ」

 保崎さんが大事なことを飛ばそうとしたのが気に食わんで、ウチは硬くなっとる木の実を軽くつねった。瞼閉じた保崎さんに向かって自分の不満を教えたる。

「まだ好き同士とちゃうやろ? 告白したのウチだけやんか」

「そっか。そ、だよね」

 胸の先を捏ねくられとる保崎さんは、溜め息みたいな壊れやすさで応える。実際の溜め息も交ぜながら、ようやく薄く目を開いた。涙に濡れた瞳を見せた。

「つっちゃんが好き」

「知っとる」

「んっ」

 期待通りの答えを得て、お返しのキスをした。あんだけ優しくしてもらっといて気付かんほうが鈍やわ。普段はケンカの雨アラレでも、弱っとる時や辛い時、アンタはいっつも側におってくれた。そんなやから、うっかりウチも惚れた。もちろんそれだけが理由やなくって、むっちゃ頭ええトコとか、たまにアホなトコとか、話とって楽しかったりイラついたり殴りたくなったりとか、勉強教えてくれたりとか、顔とか髪とか指とか、色々好きやねん。エッチなのは苦手やけど、時々やったら許したるわ。例えば今とかな。

 主導権取ってええ気になっとったウチを、保崎さんの指が咎める。お互いの指が胸を触り合う。当然保崎さんのがうまくて、ウチの乳首は痛いぐらいに尖る。表面を指先で撫で回されたら、奥までトロトロに溶かされるよな錯覚を受ける。ウチかていっしょけんめいに手ぇ動かすが、息乱れとんのは明らかにウチのほうやった。

「真っ赤になっちゃって、かわいいんだ」

「うっさいわ!」

 照れかくしっちゅーか保崎さんが喋られへんよに唇で繋がる。アホすぎやった。息苦しいうえに、うわずった声が直接響いてまうしで、顔逸らす。一回深呼吸したらそこでタイムリミット。保崎さんにクチ塞がれる。息しよう思うて開いた唇の間には、保崎さんの舌が割り込んできた。ウチの舌、いいように弄ばれて、苦しいのと気持ちいのとがごった煮になる。

「っは、はぁ……酸欠、なるわ」

「つっちゃんが気絶したら、人工呼吸で起こしてあげるね」

「アホ言うな。息させ」

 え。セリフさえ最後まで言わせてもらえへん。もう完全に保崎さんのペースやった。くやしいのに力が入らん。やから、空いた手が浴衣の下に潜っても、体ぴくぴくさせるだけで終わる。膝小僧へ落ちた保崎さんの手は、浴衣を掻き分けてゆっくり昇ってくる。ウチのアソコ触ろうとしとる。さっきから変な感じになっとるソコは、保崎さんの指にショーツごと押された瞬間、なんかが染み出す感覚があった。それと、胸以上にわかりやすい気持ちよさ。

「やぁ……」

「すごーい。お漏らししたみたいになってるよ?」

「そんなん、知らんっ」

「つっちゃんが感じてくれて嬉しいな」

 保崎さんが心底喜んどる風に言うもんやから、抵抗する気も削げてまう。くちゅん。やたら粘っこい音がショーツとアソコの間で鳴る。まるで汚れとるのを拭うみたいにショーツが擦り付けられる。水音立てられるたんびにウチの中を切ないのが走り抜けて、体全体に広がってく。

「アカン、てぇ! ひっ、あうぅ……壊れるう。くちゅくちゅされたら、ウチの大事なトコ、壊れるよぅ。も、ダメ、やからぁ! あ、あっ」

「つっちゃんが壊れたら、人工呼吸で起こしてあげるね」

「天丼すなっ! ふぁ、や、や、堪忍してぇ」

 ショーツを横にずらされる。当たり前のよに保崎さんの指が入ってきて、ウチの割れ目に添えられた。くっと開かれる。お腹の中にまだ溜まっとった液が、溢れて零れるんを実感した。指は閉じたり開いたりしてウチの蜜を搾り出す。あとからあとから流れ出るそれの代わりに、恥ずかしさ含みの快感が注がれる。

「こんなに下着が濡れちゃったら、帰るとき困るかな。んー……あ、出店のひとに絆創膏もらったんだけど、ここに貼ってあげようか。もちろん下着は脱がせて、あたしが股の間を舐めて綺麗にしたあとでね」

 サイズ足りるかなー。保崎さんの二本指が、ウチのソコを採寸する。横に当てとった指を縦に当て直して、ナカをほぐしながら指の間隔をおっきくしてく。ショーツ脱がされるんも、保崎さんに舐められるんも、サイズ測られるんもみんな恥ずかしくて、ウチはやめて欲しい気持ちを首で表す。保崎さんが知らんぷりで指を広げるから、最後はウチの大事な場所の上と下に、保崎さんの指が当たった。

「ここが一番下で、ここが一番上で……お尻の穴はこのへん?」

「っ! どこ触っとんねん! ボケェ!」

 ウチが掴む前に保崎さんの手は抜かれた。ひとさし指と中指でチョキを作る。そんで、ウチの顔とチョキを交互に見比べた。あれがウチのアソコの長さ……? 指に絡みついとるエッチな液が、ダメ押しでウチを辱めた。

「つっちゃんの、ちっちゃいから一枚で大丈夫だね」

「でっかいお世話や! バンソーコーなんか貼らんわ! こんまま帰る!」

「えー。なら、もっと濡らそっか。気持ち悪くて下着を履いてられないくらい、気持ち良くしてあげる」

 顔近づけて宣言する。ウチにとっては死刑宣告やった。背中向けて今更逃げよう思たけど、そんな許してくれるはずもあらへん。保崎さんにうしろから抱きつかれる。左手が胸のトコに、右手が股のトコにそれぞれまとわりついて、ウチの肌に吸い付いた。保崎さん自身も、ぴったりくっつく。

「つっちゃんのうなじ、汗ばんでて色っぽいね。髪型のお陰で良く見えるよ」

「今褒められても、うれしない……んぁっ!」

 良く見えるっちゅーことは簡単に触れるっちゅーことで、保崎さんの唇が押し当てられた。それをスタートの合図に、両手がウチのやらしい部分を探りだす。全体を捕まえて揉んだり、硬くなっとるトコ摘んだり……全然触られてへんかったアソコのお豆も、隠れとる中から掘り起こされて、好き勝手に弄られる。

「外側は柔らかいのに、ここだけすごく硬くしてる。かわいい」

「やめえ! んっ、やめ、てぇ。おねがい、ほさきさん、お願いやからぁ」

 ごめんね、我慢できないの。耳の裏で保崎さんが囁く。耳と頭の繋ぎ目が舌でなぞられて、ウチは悲鳴をあげる。声といっしょにアソコから零れる雫が保崎さんの指に掬われる。ウチのずきずきしとるトコにまぶされたそれは、滑りを良くするオイルやった。指の動きが早なる。胸の手はじっくり動いとんくせに、イチバン弱いトコは擦り切れそうな勢いで虐められる。でもウチ自身の漏らしとるもんが、刺激をやわらげる。痛いのを減らして気持ちよさだけにしてく。

 つっちゃん、好き。手つきとはちゃうやさしい声がウチを掻き乱す。保崎さんの唇は何回も好きって言うて、ウチのうなじにキスする。なんもかんもわからんなったウチは、うわ言みたいにウチも、ウチも好き言うて、飛んだ。お祭りのことも暑さのことも忘れて、ただ、保崎さんの腕の中におることだけ実感しとった。

 ■ ■ ■

「汗いっぱいかいちゃったね。風邪引いちゃうかも。ね、つっちゃん。……つっちゃん?」

 浴衣直したあと、ウチは保崎さんにイかされたんが恥ずかしくて、ずっとうしろ向いとった。いつの間にかウチばっかり攻められとったんもくやしい。申し訳ないっちゅー気持ちもある。エッチはキライやけど、保崎さんにも気持ちようなって欲しいのに。

「拗ねちゃった?」

「ウチは」

 振り返ったウチにみなまで言わせず、保崎さんの唇が言葉を遮った。キスは、好きかもしれん。黙っとっても大丈夫やから、上手にしゃべれんことの多いウチは、キスがんばったらえんかな。目ぇ閉じて声のない会話をする。鳥の囀りに似た音がする。……首の周りに、なんや妙な感触がある。

「難しく考えないでいいよ。あたしはつっちゃんに触るのも触られるのも、同じくらい気持ちいいしね」

「そうなん……?」

「うん。だから、あなたが喜んでくれるなら、あたしも嬉しいんだ」

 ウチから離れた保崎さんは、自分の胸の辺りをトントン叩く。意味がわからんで首傾げたウチの胸で、ちゃり、と金属の音が鳴った。目ぇ落とす。黄色い浴衣の上に、銀色のひまわりがぶらさがっとった。キスの間に保崎さんがつけたらしい、銀のネックレス。

「あたしから、誕生日プレゼント。もらってくれる?」

 保崎さんにはかなわんなぁ。気配りも優しさも、なんか、全然かなわん。やけどウチは負けず嫌いやから、もらいっぱは性に合わんねん。

 今はまだ、うまく出来へんけど。ウチは保崎さんにお礼を言うて、もいっかい、ウチのほうからキスした。

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